自治体の職員は,日ごろからさまざまな情報を収集・管理し,活用しながら仕事をしています。この情報は,もちろん,口頭で伝えることもできますが,聞いた聞かない,言った言わない,というような低レベルの争いになることもあるので,情報を記録にして残そうということになります。そこで,情報をモノに記録して伝達し,それを活用し,保管・保存することが求められます。記録するモノは,何も紙でなくてもよく,磁気テープやパソコンなどのハードディスクでもよいのです。ここでは,情報を記録した媒体を「文書」(documents又はrecords)ということにします。したがって,文書には,紙文書や電子文書なども含まれます。
文書に載せている情報は生き物ですから,発生から廃棄までの処理過程があります。この文書の処理過程を扱う仕事を「文書事務」といい,文書事務を組織的に効率的に管理することを「文書管理」(documents management 又はmanagement system for documents)といいます。
文書管理の対象領域には,
- 文書の作成
- 文書の取扱い
- 意思決定
- 文書の整理保管
の四つがあります。
なお,近年,使われなくなってきた言葉に「記録管理」(records management)があります。recordsを「文書」と訳さないで,「記録」と訳した結果生まれた言葉のようです。日本語として,あまり馴染まなかったので,「レコード・マネジメント」などと外来語として使われたりもしていました。
ところで,自治体の文書はだれのものか,についても考えておく必要があります。かつて,自治体の文書は行政のもの,行政職員のものと思われがちでした。しかし,地方自治の本旨に沿って考えるまでもなく,文書は住民のものでもあり,したがって文書は住民と行政との共用財産であります。また,公文書管理法においても次のように規定してます。「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものである」(法第1条,目的)。