自治体が情報を確保しようとするとき,それを記録されたものとして文書の形にしておくこと,つまり文書化(documentation)が求められます。「行政事務は文書に始まり文書に終わる」とは,行政の仕事の在り方を指している言葉ですが,まさにそのとおりで,行政の毎日の仕事は,文書を中心に展開しており,行政事務の多様化とともに文書の必要性と重要性がますます増えています。
事実,情報は文書にしなければ,担当者当人の記憶にはなるかもしれませんが,組織体全体の記憶にはなりません。こうした情報の文書化を求める「文書主義の原則」は,「事案の処理は,すべて文書による」に代表され,民間,行政を問わず存在しますが,ことのほか行政では,強く認識されています。
このため,公文書管理法第4条に基づき,行政文書の管理に関するガイドライン第3-1においても,行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義の原則については,行政機関の諸活動における正確性の確保,責任の明確化などの観点から重要であり,かつ公文書管理法の目的である,「行政が適正かつ効率的に運営されるようにする」(法第1条)ためにも重要であるとしています。
そこで,「行政事務は文書に始まり文書に終わる」の意義をもう少していねいに整理しておきましょう。自治体に求められているのは,公正にして民主的な行政運営です。この目的を果たすためには,自治体が最適な意思決定を継続することが求められます。意思決定を最適にするためには,何よりもまず判断材料としての情報の収集・管理が大切になります。この情報を扱う仕事を事務といいますが,自治体には,「文書主義」又は「文書主義の原則」があって,情報は文書にして扱うことになっています。したがって,事務のほとんどが文書事務になり,この文書事務を組織的に効率的に管理する「文書管理」が大切になります。
ですから,文書管理は,自治体が公正にして民主的な行政運営をするための基盤であるといえます。このことを,一般に「行政事務は文書に始まり文書に終わる」といっています。