文書管理に係る誤解は多いです。そして,この誤解が文書管理の問題点を誘発します。したがって,庁内で文書管理改善を担当する改善推進者(プロモー ター)には,次のことが求められます。まずは,職員の意識面の誤解を解くのに,研修やマニュアル等による啓発を,次にシステム面や技術面の誤解を解くのに,高品質な文書管理システムを評価選別することです。
ここでは,多くの職員がもっている文書管理の誤解を,(1)紙文書に係る誤解,(2)電子文書に係る誤解,(3)文書の私物化に係る誤解に分けて整理します。
1. 紙文書に係る誤解
- 文書は紙であり,文書管理は紙のお片づけである?
- ペーパーレス時代になって紙が無くなるのだから,紙文書の管理は必要でなくなる?
- ペーパーレス時代になるのだから,今後は電子文書管理システムを導入すれば,すべては解決する?
2. 電子文書に係る誤解
- 電子文書を記録している媒体の実用耐用年数は,半永久的である?
- 電子文書には,紙文書と同様に法的証拠能力がある?
- 電子文書管理システムが導入されているのだから,紙文書の管理は必要ではなくなる?
- 電子文書管理システムは,紙文書と電子文書を一元的に管理してくれる?
3. 文書の私物化に係る誤解
- 文書は,行政のものであり,自分の文書であり,自分の資料である?
- だから,文書を自己流で整理しても,何ら問題ではない?
- よしんば,文書は行政のものとしても,やはり文書管理は行政の裁量行為である?
- 文書を「放置」して退庁しても,だれも文句を言わないのだから問題はない?
- 文書を「持ち出し」ても,だれも文句を言わないのだから問題はない?
こうした誤解が重なって,そもそも文書管理は仕事というほどのものではない,ということになり,文書管理の軽視につながるようです。
しかし今後は,職員一人ひとりが公文書管理法の目的である,「国民主権の理念にのっとり」(法第1条),職員の義務として行政文書を適正に管理することが求められているのです。