文書管理の根本問題は,職員の公文書の私物化を容認する意識に集約されていると思います。
自治体は,民間に比べ文書の多い組織体ですが,施行中の文書や既に施行済みの文書などが担当者の私物同様になっていて,担当者本人でないと探し出すことが難しい,担当者がいないと何がどうなっているのかさっぱりわからない,ということが日常的ではないでしょうか。幸いにも文書を探し出すことができればよいのですが,そうでなかった場合には,内部の職員はもとより,外部の方にも迷惑をかけることになってしまい,住民サービスにも差し障りがでてきます。
担当者は,自分の机の上や引き出しに文書を置いておくことが,最も仕事がやりやすく,文書を探しやすいと勘違いしていることが多いようです。しかし,文書管理の実態調査でも明らかなのですが,机上に文書を放置して退庁している自治体ほど,担当者自身の文書の検索性は低下しています。机の周りに文書を置いて文書の手元保管を許すと,即時検索ができるかというと,必ずしもそうではなく,逆に時間を要するという調査結果となっています。
そのように,担当者本人でさえ決して検索性は高くないのですから,担当者以外の職員による検索はさらに困難ではないでしょうか。
文書管理上の問題点をもう一つ挙げるとすると,それは不要文書のはん濫です。
自治体の事務室を眺めると,いたるところに文書が散乱し,天井に届きそうなくらいの場所までふさいでいて,執務環境を悪くし不潔にもしています。年々文書の量は,増え続け,通路も狭くなり,事務室内の有効スペースは次第に減少しています。これは,文書のライフサイクルを統制する適切なシステムが働いていないからです。
書類の利用状況について,次のような調査結果があります。
1. 手元にある文書の5割は捨ててもよい。
自治体がファイリングシステムを導入するときに行う大掃除の結果によると,事務室にある文書のうち,5割程度はすぐ廃棄しても職務に全く支障のないもの,約3割は捨てることはできないけれどもあえて事務室内に置いておく必要がないもの,残りの約2割が,本当に手元や事務室内に置く必要があるものになっています。これは,どこの自治体でもほぼ同じような結果が出ています。
2. よく見る文書は1年以内のもの
毎日発生する文書を1件1件,必要・不要の区分をつけることは難しいので,そのまま取っておきがちです。しかし,米国のNAREMCO(National Records Management Council)の統計調査によると後で見たり,参考にする文書の90パーセントは過去半年以内のものでした。そして,99パーセントは1年以内のものでした。言い換えれば,1年以上の古い文書は100回のうち1回しか見ないということです。
したがって,1年以上たった文書のほとんどは,事務室に置いておく必要はなく,必要最小限のものだけを保管しておけばよいということになります。将来,使うかもしれないからというだけで取っておくと,実はあまり見ない古い文書が事務室にたまっているということになりがちです。事実,そうした自治体は多いようです。