物事の整理には「分類」の概念が不可欠ですが,特に「AKF」における文書の整理では,重要なポイントになります。文書が的確に分類・整理されていれば,文書の検索はスムーズになって文書管理全体にも好影響をもたらし,良い整理が長続きすることにつながるからです。
このように,「AKF」にとって重要な文書の分類ですが,しばしば大きな誤解をされていることがあります。例えば「理論・理屈で組み立てるので難しい」とか,「文書の分類が面倒である」などがそうです。しかし,決してそのようなことはありません。職員が毎日使っている文書のことですので,当の職員にとって,便利で使いやすい分類を作れないはずがありません。
文書分類のポイントは,次の五つに絞ることができます。
1. 分類基準は,「担当者」や「個人」でなく,「組織」や「課」の立場で判断します。
この問題は文書分類のことだけでなく,ファイリングシステムのすべてに通じることではありますが,事の是非,良し悪しを判断するとき,担当者個人として「良い」とか「悪い」とかではなく,組織として課として「良い」のか「悪い」のかで判断を下すことになります。
したがって,「個人」にとっては反対したい文書分類であっても,「AKF」では組織として実施するものですから,「課」として採用しなければならない場合があります。個人的・主観的な判断に基づく文書分類では,いつまでも長続きすることは期待できません。組織の全員が共通理解し,納得できる客観性のある分類でこそ,良い整理・良い管理が長続きするのです。
2. 業務担当者が中心になって文書分類を作ります。
文書を整理するときの基準になる文書分類を作るには,その文書を使って業務を遂行している担当者が最も適任でしょう。必ずしも,各担当者は文書分類に関する専門知識を十分に持ち合わせているとは,言えません。しかし,対象であるその文書を一番よく知っているのは担当者のはずです。どの業務にどの文書がどのように使われるのか,また一見似てもいない文書同士が実は大変関係深かったり,反対に同じように見えても実は全然異質のものであったりすることを知っているのも,また今後の文書量や重要性の変化の予測などができるのも,やはり担当者です。したがって,文書分類を作るには,その業務担当者が最も妥当であると言ってよいでしょう。
3. 「理論」偏重では,使いやすい文書分類は作れません。
これから作成しようとしている「文書分類」は,組織として共有する「文書」を対象としています。したがって,文書の私物的な取扱いではなく,組織としての管理体制下に置くことになり,文書の分類体系は全員が共通理解していることが前提になります。そのためには,文書分類はどうしても全員を納得させられる「理論」に裏打ちされたものでなければならないのです。
しかし,この「理論」は,文書の種別(目的・主題・結果など)だけを論ずるのではなく,文書の量や使い方も含めなくてはなりません。はっきり言えば,「文書量」のことを忘れた,いわゆる「理論」だけの文書分類では,利用者にとってまことに不便なものになってしまうということです。そこで文書分類の作成に当たっては,実際に使っている文書そのものを利用して分類の検討をします。
4. 分類の各項目を並べる順番,すなわち「水平分類(業務プロセス式水平分類ともいう)」を重視します。
文書分類の各項目は,お互いに関連付けられて一つの「体系」になります。したがって,文書分類の各項目を並べる順番,すなわち「水平分類」の組み方が極めて大切です。
各課等の単位でまとめた文書分類の各項目は,次週で述べる項目のとおりに並べます。水平分類は,担当者だけが納得するのではなく,異動してきた職員もすぐ分かり,課内の共通理解の得られるものにします。水平分類とは検索の思考過程そのものである,と言えましょう。水平分類をシッカリ組むことが,結果として良い整理,良い管理を長続きさせることにつながります。
5. 始めから完ぺきを期すより,徐々に固める推進方式を採ります。
物事を成し遂げるのには,何度もやり直して仕上げるより,一度でスッキリと完成した方が,気分も良いしはるかに効率的でもあります。
しかし,他の改善ならばともかく,文書分類の構築には,この方式は不向きです。その理由は,対象である文書自体には,多様性と併せて固有性が存在するからであり,またその量は膨大であり,日々発生するものあり,消えていくものあり,という具合に,はっきりととらえ難いところがあるからです。
むしろ,多少の試行錯誤はやむを得ないと初めから覚悟を決めておきます。何度かやり直しながら徐々に固めていく方が実務的で,結局は分かりやすい,使いやすい分類体系が短期間で完成することになります。