キャビネットの種類
バーティカルファイリング用の引き出し式の文書保管容器をキャビネットといいます。先進的なファイリングシステムを導入済みの自治体では,保管文書の整理にこのキャビネットを使っており,補助的に鋼製保管庫などを併用しています。
キャビネットには,標準型キャビネットとラテラル型キャビネットとがあります。
1. 標準型キャビネット
我が国では古くから,この引き出しの奥行きの深いものが使われてきました。現在では,3段引き出しのものが,事務室の見通しを妨げないということでよく使われています。行政文書の用紙規格のA判化統一とともに,現在最もよく使われているのはA4判3段引き出しのタイプです。コンプレッサという後ろからファイルを押しつける板が付いているタイプのものもあります。
2. ラテラル型キャビネット
ラテラル(lateral)とは,側面からのという意味で,引き出しの奥行きが浅く,幅の広い和ダンス式のキャビネットで1960年代から使われ始めました。最近は,見た目の新しさやレイアウトのしやすさなどから,好まれるようですが,別にこのほうが格段使いやすいわけではなく,収納効率がよいわけでもありません。
なお,引き出しへのフォルダの入れ方ですが,左から右に向かって並べるsidetoside方式が普通ですが,少々見にくい難点があります。もっとも,標準型と同じように手前から奥にfronttobackに2列並べることもできますが,横方向にムダなスペースが出るものもあり,収納効率や私物化などの問題が出てきます。これまで多かったA4とB4との兼用型ラテラルキャビネットは,行政文書のA判化に伴い,A4専用型になっていくと思われます。
キャビネットの選定
キャビネットの選定は,判断を誤らないようにしたい,大切な部分です。適否の基準は,
- 容器自体が「使いやすく」
- 文書が「探しやすく」
- 「取り出しやすく」
- 「捨てやすく」
- 「私物化を防ぐ」もの
ということです。外見上だけで判断してはいけません。容器はあくまで「うつわ」であって,必要なことは,収納してある文書を手早く探し出せる使い勝手にあると考えることです。
むろん,標準型とラテラル型の2種類のキャビネットのタイプを併用するよりは,いずれかのタイプに統一した方がよいと思います。標準型かラテラル型かを選択する際の留意点は,次の4点です。
1. 使いやすさ
- キャビネット内に実際に個別フォルダが収納されている状態で,どちらの方が文書の出し入れが容易かを比較します。標準型は,引き出しを引っ張ると個別フォルダが前から後ろに並んでいるのに対して,ラテラル型は,左から右に並んでいるので腰をひねって文書を検索するか,横向きになる必要があります
- 標準型は,必要なときだけ引き出しを開けますが,ラテラル型は,執務時間中ふたを開けたままにしますので,個別フォルダの「小口」が見えた状態になります。
- 標準型は,引き出しの奥行きがあるので,レイアウトに工夫が必要です。また,キャビネットの前にスペースが必要です。このスペースは,キャビネットから文書を取り出すときだけ必要なものですから,普段は通路として広く使えます。
2. 単位文書当たりの経費
- いずれかのタイプのキャビネットを基準に,例えば,8台として想定して,キャビネットの1段の引き出しに収納できる文書の量(長さ)から全体の収納可能な文書量を出します。
- 次に,もう一方のタイプのキャビネットに同じ量の文書を収納するには,何台のキャビネットが必要かを計算します。(計算上ですから,小数点以下の端数が出ても構いません。)
- この結果,同じ量を収納するのに必要なキャビネットの台数が把握できます。それぞれのキャビネットの単価をかければ,総経費が出てきます。
- この総経費を比較すれば,単位文書当たりのキャビネット代が,いずれのタイプが割安か,収納効率がよいかが分かるはずです。
3. 購入単価
それぞれのタイプのキャビネットを他の自治体で最近購入した例があれば参考になります。その際に値引き率も考慮すべきです。
4. 必要面積
上記2.で計算した台数のキャビネットを設置する場合に必要な面積(引き出しを出した状態で)をそれぞれのタイプのキャビネットで比較します。単位文書当たりの必要面積に両者間の差は,むろんありません。