現在の電子文書管理システムが使いにくく問題が多いのは,システム設計が日々の文書管理の現場から作られたものではないからだと思われます。まずは,日々の文書私物化容認意識を認めないシステムを構築することが必要です。また,今後,電子化が進んだとしても,全体の2~3割が電子媒体文書,7~8割が紙媒体文書と予測されるため,その7~8割を占める紙媒体文書をシステム内に取り込んで管理することが必要です。さらに,通常業務のなかで,フォルダをキャビネットから出し入れするのと同じ感覚で扱えるシンプルさが必要です。以下に,使いやすい電子文書管理システムの要件をいくつか挙げます。
1. AKFを前提とする
システムは,全体の7~8割を占める紙媒体文書を適正に管理するAKFを前提とします。したがって,AKFが有する品質,すなわち,
- 文書の私物化を容認しない
- 文書管理の対象範囲が適切である
- 文書管理の目的を明確にしている
- 文書管理の拠って立つ規範を有する
を満たしている必要があります。
2. 紙文書と電子文書とを一元的に管理する
一元的に管理するというと,紙をデジタル化することによって媒体を一元化すると考えるのがこれまでの発想でした。しかし,「媒体の一元化」ではなく,「管理の一元化」をこそ実現させるべきです。その管理ツールは,「ファイル基準表(公文書管理法での「行政文書ファイル管理簿」)」です。このファイル基準表が紙と電子を一元的に管理するわけです。別な言葉で言えば,優位性のある紙文書を管理するシステム(AKF)を温存し,その上に,電子文書を取り込んで融和させる一元的管理です。
3. 利用者にやさしい
システム設計にSE(システムエンジニア)が中心になると,多機能な,最高スペックを狙いがちです。しかし,自治体職員は,最高スペックではなく,最適スペックを求めます。ありとあらゆる機能は必要がなく,それぞれの自治体で,優先順位をつけて仕様を策定することが望まれます。
なお,次の点も考慮すべきです。
- 意思決定のプロセスにおける電子決裁機能。
- 流通・交換のプロセスにおけるLGWAN連携。利用度の問題はありますが,付加機能として考慮が必要です。
- 財務会計システム・人事給与システム・庶務事務システムなどとの連携も考慮する必要があります。例えば,人事情報(所属・異動等)や決裁機能の連携が考えられます。
- 非現用文書も管理の対象とし,その評価・選別及び閲覧目録の作成等アーカイブズの管理・利用も視野に納めると良いでしょう。