1. シン・クライアント
まず,退庁時,電子文書も「机の上は滑走路」にすべきです。目に見える紙文書はなくなって滑走路になっても,一人1台のパソコンの中に,目に見えない電子文書が山積みになっているのではないでしょうか。ICT化によって文書の私物化が増幅されたと言われているのは,この現象を指しています。
そこで,電子文書について,「退庁時,机の上は滑走路」にするためには,いわゆる「シン・クライアント」の体制にすることが望ましいです。退庁時,職員の作成又は取得したデータを,すべて全庁共用のサーバーに保存し,個々のパソコンの中を空っぽにするという方法です。静岡県のある市では,次のような「行政情報ネットワーク運用規程」を定めています。
「職員は,配備パソコン内部に記録したデータであって外部に漏れてはならない重要なデータについては,退庁時に全庁LANのシステム又は当該パソコン外部の安全な記録媒体に保存し,当該配備パソコン内部のデータを消去するものとする。」
これは,完全な「シン・クライアント」ではないのですが,まず重要なデータについては個々のパソコンから全庁共用のサーバーに移すことを求めています。
2. 課内での共有・分類
次に,全庁共用のサーバーに保存された情報を,少なくとも課内で共有・利用できる体制にすべきです。そのために,所属内で,ファイル基準表に準じて構成した分類体系を設けることにします。
つまり,課別に割り当てられた全庁共用のサーバーに,ファイル基準表と同様のファイル階層(大分類-中分類-小分類)を登録し,例えば,起案時に添付資料として作成したワードやエクセル等の電子データは,当該紙文書と同一の小分類(個別フォルダ)に保存するようにします。
その結果,紙文書と電子データのリンクがなされ,紙文書と同様,電子文書についても,課内で共有・利用することが可能となります。
ここまでは,課内での情報共有・活用による情報の即時検索を達成するものなので,文書管理の「目標」のステージです。電子文書に関しては,まだその「目標」段階も達成しえていない自治体が多いのです。