保存期間を満了した文書のうち,歴史的・学術的・文化的な価値のある文書のことを,一般文書(現用文書・半現用文書)と区別して,史料・文書・歴史資料(非現用文書)などと言い,公文書館や歴史資料館などで管理されることがあります。こうした受け皿を持った自治体は,必ずしも多くない状況ですが,それでも市史編纂部門などと協議して,何らかの方法で一般文書としての保存期間を経過した後の文書についても選別し,保存することが求められます。
なぜなら,文書は,現在の住民・行政の必要性だけでなく,将来の住民・行政の判断や意思決定のためも貴重な資料となるからです。また,行政は,現在の住民だけでなく,将来の住民に対しても説明責任を果たさなければなりません。つまり,現在と将来の住民による自治のために,歴史資料の保存が求められているのです。
昭和62年に公布された公文書館法第3条では「国及び地方公共団体は,歴史資料として重要な公文書等の保存及び利用に関し,適切な措置を講ずる責務を有する」と規定され,自治体における歴史資料として重要な公文書等の保存の責務を明らかにしています。
自治体で公文書館条例をもっているのは,現在,約60団体ですが,そこでは,保存期間を満了した非現用文書の中から歴史資料を評価基準に基づいて選別する体制となっています。しかし,その残りの自治体では,同条例をもたないこともあり,歴史資料の評価選別もなされず,保存期間満了を理由にほとんどが廃棄されているのが現状ではないでしょうか。特に,市町村合併時に,歴史資料が大量に破棄されることが懸念されます。
こうしたことを防ぐためも,公文書管理法の「行政文書の管理に関するガイドライン」では,職員一人ひとりが,文書を作成又は取得した当該年度末に,行政文書ファイル管理簿(文書目録)を作成する際,保存期間満了時の措置として,歴史公文書等として「移管」するか,又は「廃棄」するかを決めることになっています。このようなことから,歴史資料を選別し,保存できるような,文書管理の仕組み作りが急務なのです。