公文書管理法が施行される前の事例ですが,埼玉県のある市(市立歴史資料館があります)では,保存期間満了との文書の流れは次のとおりです。
- 文書主管課でファイル基準表により保存期間が満了した文書を確認する。
- 文書主管課から各課へ保存期間が満了した文書について通知を出す。その際に通知のなかで保存期間延長希望の文書の調査も行う。
- 保存期間延長の希望がある場合には,「保存期間延長届け」によって,1年間の保存期間延長の手続きを行い,書庫の保存期間延長文書の棚に置く。
- 保存期間延長の希望のない文書について,文書主管課から資料館に移管する。
- 閲覧禁止の文書は,資料館に行っても公開されることのないように明確にする。
- 資料館の保存庫でその文書保存箱の保存期間と同一年数保管される(例えば,10年保存の文書は,保存期間満了後に資料館で改めて10年間保管する)。
- 保管年数経過後,歴史的等の価値のある文書は選別され,引き続き保存される。
- 歴史的価値のある文書以外は,ここで初めて廃棄処分される。
- 廃棄するに当たっては,廃棄文書目録を資料館で作成し,文書主管課と当該文書の各担当課に通知する。
- 文書主管課と該当文書の各担当課は,廃棄の承諾に当たり,文書廃棄承諾書を作成し, 資料館に提出する。
なお,各自治体の文書取扱規程では,文書の発生から廃棄に至るまでの取り扱いについて規定していますが,保存期間を経過した文書の扱いについて廃棄の規定のみの場合には,公文書館や資料館などへの移管について,規程を整備する必要があります。
また,保存期間ですが,永年保存文書は30年保存文書とし,ICA30年原則に沿って,公開に供することも検討すべきではないでしょうか。
特に,移管先を持たない自治体においては,歴史的価値のある文書を,どのようにして残すかといったことについても検討が必要です。保存期間が満了した文書をそのまま廃棄するのでなく,評価・選別を行った上で,例えば,廃校となった学校の校舎などを当面の保存庫として利用し,保存・公開することも一つの方法といえます。
(参考)ICA30年原則について
ICAは早期の情報公開を実現するために,1968年ICAマドリッド大会において,利用制限は原則として30年を超えないものとすべきとする「30年原則」を提示しました。
この原則では,情報公開制度に基づく開示請求の対象となる行政文書の保存期間を最長で30年間とすることで,保存期間満了後の文書を公文書館に移管し,一般の利用に供することを目的としています。