公文書管理法のガイドラインでは,職員が文書を作成又は取得した当該年度末に保存期間満了時の措置,すなわちアーカイブズの評価選別をし,ファイル基準表(公文書管理法では「行政文書ファイル管理簿」)に記載することになっています。
各原課の職員に評価・選別を委ねると,どうしても職員の意識によってばらつきが出るのは避けがたいようです。文書主管課が知らないうちに,歴史的重要文書が廃棄されてしまう危険もあります。そこで,全庁の文書について,文書主管課がアーカイブズ保存のための何らかの対応が取れないかが課題となってきました。そして,文書主管課にそのように対応できる時間があるかどうか,その専門性があるかどうかが問題となってきました。
また,文書主管課が評価選別を行うためには,各原課において,現用段階での文書が適正に管理されている必要があります。どの課でどのような文書が管理されているかわからないような状態では,文書主管課は対応のしようがありません。
そこで,まずはこの点を確認し,文書主管課を中心に,公文書管理法のガイドラインに則った文書管理を徹底することで,ファイル基準表(「行政文書ファイル管理簿」)を整備し,各原課で保有する文書の情報を,文書主管課が確実に把握できる環境を整えることから始めます。
なお,その環境を前提として,文書主管課が評価選別を行う場合の考え方と方向性は,次のとおりです。
- 文書主管課の職員が,アーキビストたるふさわしい知見と技能を,自学又は研修等により習得し,もしくは専門家の助言を受けながら,文書の作成及び収受の翌年度中に,各課から提出されたファイル基準表に拠って,あるいは各課に出向き,現物の文書を見ながら,当該原課の職員と相談をしながら,毎年,評価・選別するという方法です。北海道及び長崎県のある町で試行されています。
- 文書主管課の職員が,あらかじめ,ざっくりとした「アーカイブズ可能性群」を掬い取っておく,というところまでを文書主管課が行うようにする方法があります。ひとまずアーカイブズを廃棄の危機から救い出して一時「凍結」しておく,あとは専門家が登場して「解凍」し評価・選別するのを待つ,という方法です。
- 文書主管課の職員が,このような,「ざっくりとした掬い出し」のために,歴史的重要文書に関するキーワードを抽出して,そのキーワードによる自動評価選別検索を,IT技術を用いて行う方法もあります。その検索の対象となるのは,毎年度各原課で作成されるファイル基準表であり,そこに記載されたフォルダタイトルです。この「ざっくりとした掬い出し」作業は,電子媒体のファイル基準表であって初めて可能となります。現在,AKF導入自治体はすべて電子媒体でのファイル基準表を作成していますから,この自動評価選別検索は原理的に可能となっています。
以上が,アーキビストが配置されていないほとんどの自治体における,文書主管課によるアーカイブズ救済方法です。