「AKF」の導入に伴う文書主管課の仕事の増加量は,その自治体の規模や組織,導入の体制などによって異なります。ここでは,一般的なことを「AKF」の導入前,導入中及び導入後の仕事に分けて取り上げてみましょう。
1. 導入前の主な仕事
- 1. 庁議などのトップ会議での「AKF」の導入決定
- 「AKF」の導入は,これまでの文書管理システムを大きく変えるものであり,また現状の文書管理上の問題点を解決することでもあり,さらには外的インパクトである公文書管理法や情報公開制度などに対応するためにも,庁議などのトップ会議で決めます。
- 2. 文書主管課などによる「AKF」を採用している自治体の視察
- 文書主管課のほか,許される限り多くの人に参加してもらいます。導入のスケジュールが決まってから,ファイル責任者やファイル担当者の視察を計画してもよいでしょう。
- 3. 容器・用具の決定
- キャビネット,フォルダなどのファイリングに使う容器・用具の選定を行います。
- 4. 容器・用具の発注
- キャビネット,フォルダ,文書保存箱などを発注します。
- 5. 導入スケジュールの決定
- 自治体の規模によって,いくつかのブロックに分けて導入します。最初のブロックはモデルブロック(50人程度)で,3か月の間に研修及び4回の実地指導で導入が完了します。モデルブロックでの試行の後は,職員数に応じて,本格ブロック(100~250人程度)の数を増やしていき,各ブロックを3か月単位で完了します。
2. 導入中の主な仕事
- 1. 研修会の開催
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- 管理職研修:すべての管理職が対象
- 専門研修:導入する保管単位(課)のファイル責任者とファイル担当者が対象
- 一般研修:導入する保管単位の職員で上記の研修の対象者以外の職員全員が対象
- 2. 書庫の整理と文書の引継ぎ
- 「AKF」の導入に伴い,執務室などにあふれていた文書が書庫に保存されます。書庫にゆとりがある場合でも,この機会を借りて,各課にも書庫の整理を行ってもらいましょう。その上で,書庫に保存される前々年以前文書の引継ぎを行います。
- 3. 不要になった備品類の処分
- 不要になったキャビネットやレターケースなどを小・中学校,福祉施設,病院などで「AKF」を導入しない施設に引き取ってもらいます。物品庫などで再利用してもよいでしょう。
- 4. 専門アドバイザーによる実地指導
- 文書主管課長又は課長補佐が専門アドバイザーに同行し,各保管単位の実地指導に立ち会います。「AKF」の導入に関し必要な事項について取りまとめ,各保管単位へ通知します。
- 5. 本格ブロックの研修など
- モデルブロックに引き続いて,本格ブロックなどを対象に研修や文書の引継ぎなどを行います。出先機関を含め,全庁的に「AKF」が導入されるまで継続されます。
3. 導入後の維持管理での主な仕事
- 巡回実地点検指導の事前研修巡回実地点検指導の前に維持管理点検表に基づき,各項目について事前にチェックし改善しておくため,研修を行います。
- 巡回実地点検指導一般に,文書管理の構築では,導入より維持管理の方が難しく,また大切です。システムのレベルを向上させ,長続きさせるために,毎年,維持管理のための巡回実地点検指導を行います。
- 文書の引継ぎ年度末に各課の文書を書庫に保存するため,引継作業を行います。
4. 職員の増員を要求する必要性
文書主管課の負担が大きくなることは明らかですが,「AKF」導入のために職員を増員した例はあまり聞いたことがありません。しかし,全くないわけではなく,首都圏のある市(保管単位数約210)では,本格的導入の年度に2人増員しました。
逆に,人員増の要求をすればするほど新規事業として認められにくくなるというのが実態です。自治体の規模により,大きな負担になる場合もあるかもしれませんが,ここは文書主管課の職員ががんばるしかないと覚悟を決めることです。苦労すればするほど,導入後に大きな事業を成し遂げた実感がわくはずですし,それに自信も付きます。