1. 維持管理の必要性
文書管理を導入しても,その後の維持管理を怠ってしまうと,すぐに文書の私物化が始まり,必要な文書を探すのに苦労したり,時間が掛かるようになったりします。そのようなことになってしまったのでは,文書管理を導入した意味が全くなくなってしまいます。
維持管理は,導入よりも難しいと言われます。とかく導入が終われば,新しい文書管理制度への移行が完了し,ひと安心と思いがちですが,どちらかといえば,導入は比較的やさしいのであって,本当に難しいのは,維持管理なのです。力の配分でいえば,導入2割,維持管理8割といっても過言ではありません。維持管理を怠ると,元のもくあみです。このことを文書主管課は,十分認識しておく必要があります。
2. 定着するまでに要する期間
システムが定着するには10年かかると言われています。いわゆる「維持管理十年原則」と言われるもので,これを貫徹しシステムを定着させた自治体に佐賀県鹿島市や長崎県時津町などがある。ファイリングシステムの父といわれる三沢仁も,その著書『5訂ファイリングシステム』の中で,「定着するまでに何年かかるかは,一概には言えぬが,まず10年と考えてよさそうに思う。」と述べている。
一度導入した文書管理が崩れないようにするための維持管理をする際には,毎年レベルアップをしていくという前向きの姿勢も必要です。導入時にコンサルタントから合格が出たと言っても,本当は,一つの通過点でしかないのです。山登りで例えると,導入合格時の到達地点は2合目だと言いわれています。いずれにしても登り始めてわずかな位置にいるのです。
維持管理を続ける際に大切なのは,その年その年でレベルに合った重点目標を定めるなど改善に努め,段階的に職員の意識を高めていくことです。システムも10年くらいたつと,導入後に自治体の職員になった人たちがある程度の割合を占めます。不幸にしてシステムが崩壊し,簿冊式に戻ったと仮定すると,こうした職員には,簿冊の経験はなく,文書を簿冊にしてとじ込んでしまうことに手間が掛かり,不便だと思うに違いありません。
ADMiCは,システム定着のための「維持管理十年原則」を,「AKF」を導入することで,大幅に短縮する社会的実証実験を数年前から行っています。それは旧来の指導方法と指導到達レベルの改良に加えて,ADMiCが併設する文書管理の専門職育成機関である「行政文書管理アカデミー」での人材育成とを絡めて行うものです。なお,行政文書管理アカデミーの修了生には,「行政文書管理士」の称号が付与され,維持管理及び自主管理の段階でいかんなくその才腕を発揮し,システムの定着に欠かせない人材になります。
3. 維持管理は毎年同じ内容で行うのか
基本的な部分は毎年同じ内容で行いますが,レベルアップを図るために重点目標を決めて行うとよいでしょう。その場合,年度ごとにそのレベルに合った目標を設定するようにします。例えば,分類,継続文書の解除,不要文書の廃棄など視点を変えた目標を定めて点検にあたり維持管理の徹底を図ります。