「AKF」には目標・目的があることを最初に述べました。その目標・目的に応じた維持管理のレベルがあります。
1. 目標=課内での情報共有と活用
まず,文書を担当者個人が手元で保管する習慣をなくし,自分の担当する文書も,自分以外の職員の担当する文書も,高速で取り出すことができるというレベルを安定して保つことができれば,目標のレベルが維持できていると言えるでしょう。
このようにして「AKF」が職員に理解され浸透していくと,課全体の所掌事務の内容が見えるようになり,仕事が見えるようになります。そのなかで,これまで職員一人一人がやってきた仕事のなかに,同じようなことを重複して行っていたり,必要がないと思うようなことをやっていたり,いろいろなものが見えてくるはずです。文書だけでなく職員の頭のなかも整理されてくるのです。
このように各職員が課全体の仕事を見渡せるようになることによって,事務の見直しや業務改善につながれば,グレードの高いシステムが構築できたということになります。
ADMiCが創案した文書管理の改善理論であるCT(Crystal Triangle)理論に基づいて改善実践している自治体では,導入開始から3か月後に本目標を達成しています。なお,CT理論は,
- 文書管理の品質
- 指導者
- 指導方法
の三つから成る三位一体論です。
2. 目的=全庁的な情報の共有と活用
各課で共有した情報が,そのまま各課に留まっていたのでは,あまりにももったいない話です。せっかく収集し,また,時間をかけて作成した情報は,全庁的に共有して活用したいものです。そのためには,各課が毎年度作成する「ファイル基準表」を全庁的に検索できる体制を作ることになります。年度を越え,各課を越えて,「ファイル基準表」の情報を共有できるようにするということです。これは,文書主管課の任務です。
これによって,各課に居ながら全庁的に集積されたデータの検索ができるわけです。求めている情報を自分の自治体が持っているかどうか,その有無がわかるだけでも有益です。すでに持っていれば,その情報をその課に行って見せてもらうことになり,もし持っていなければ,自分で収集することになります。
このような検索が可能になるためにも,フォルダのタイトルはその情報の活用性を高めるものでなくてはなりません。
3. 究極の目的=住民との情報の共有・活用
住民自治への道を拓くことが,「AKF」の究極の目的です。究極の目的というと,当面の仕事には具体的に関係ないと思いがちです。しかし,そうではなく,いつでも住民が情報を活用できるように心しておくべきことがあるのではないでしょうか。
たとえば,フォルダのタイトルをつける場合に,担当者や係内でしかわからない略語や専門用語などは使わないということです。そのタイトルが「ファイル基準表」に載り,それが「情報公開目録」となって住民の閲覧に供されるのですから。
以上のように,目的志向性をもって維持管理を行うと,最初の目標もおのずと維持できるのですが,目的志向性を失ってしまうと,最初の目標さえもその維持を約束できなくなるという現実があります。